北大路魯山人「春夏秋冬 料理王国」読書感想文
北大路魯山人は、「高級な料理を好む美食家」というイメージ。
著書を読むのも初めてです。
まずは著者のプロフィールから読んだのですが、その結びが「確かな審美眼で他を圧倒する一方で、妥協を許さぬ性格から周囲との衝突を繰り返し、不遇な晩年を送る。」となっております。
後世にまで引き継がれるプロフィールの結びがこれって・・・。
どれだけ衝突していたんだろうか。
今回「春夏秋冬 料理王国」を読み、「高級な料理を好む美食家」のイメージは完全に崩れました。
魯山人は、単においしいものと料理が大好きで、食へのものすごい探究心を持った正直すぎる人だと感じました。
端々に嫌味っぽい記述があり、「これは確かに色んな人と衝突するだろうな」と思いましたが、全体を通して感じたのは、、食材や料理への愛でした。
野菜の皮なども使い切り食材を無駄にしない、良質な食材を適材適所に用いる、食べる人のことを思って調理することをとても大切にされています。
盛り付けも重要な要素。理想の盛り方を求めて、食器まで製作してしまう。
その気持ち、すごくわかる!
私は建築に関する仕事をしていましたが、建築といっしょだな、と思いました。
おいしい料理の基本は、良質な食材から。
良質な食材はいかにして生まれるのか、まで徹底研究されています。
なので、上部だけで「●●産の●●はおいしい」などと評している料理評論家のことは痛烈に批判しておりました。
この本には、魯山人が考える「料理する心」の記述から始まり、色々な食材、調味料のうんちく、海外での食の体験記、家庭でも実践できるようなちょっとした料理のコツなどについて記されています。
「昔のお寿司屋さんは立ち食いスタイルだった」とか、ついつい人に話したくなるようなうんちくがたくさんあって楽しいです。
鰻や鱧、ふぐなどの高級食材のことから、お茶漬け、納豆、味噌汁などの家庭料理に至るまで分け隔てなく記載があり、「料理は高いか安いかでなかく、正直に自分の体と相談して、食べたいものを食べるべき」を実践してこられた方なのだと思います。
魯山人は不義の子として生まれ、養子に出され虐待も受けていたそうです。
その中で自分の存在価値を生み出そうとごはんを炊く役割を担い、お米を独自ブレンドしたり工夫を重ね、10歳の時には、おいしいごはんが炊けるようになっていたそうです。
食への目覚めがこのようなきっかけだと、なんだか少し切ないですね。
あとがきには、「山鳥のように素直でありたい」と、自然と自分が欲する食物を食べ、自然の流れに委ねて健康に生きていきたいと記されています。
「食物は、自分の肉体や精神を作ってくれる根本」とも記しており、そのとおりだと思います。
なかなか忙しくしていると手を抜いてしまいがちですが、
旬の食材を、持ち味を生かす料理を、自分の体の声に耳を傾けながら食べていきたいな、と思いました。
おいしいものや料理が好きな方はもちろん、日本文化に興味のある方やものづくりに携わる方にもおすすめの本です。
そうそう。
この本で知ったのですが、関東でいう「寄せ鍋」を関西では「楽しみ鍋」というそうです。
寄せ集めではなく、お楽しみ。なんかいいですよね。
寒くなってきたので、今夜は「楽しみ鍋」にしてみようかな。
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